統合失調症の休職期間中、復職へのステップを支えるプログラムについて解説します。
統合失調症の基礎知識
100人に1人の割合でかかるともいわれている統合失調症。「治らない」との誤った認識を持たれることもある疾患ですが、多くの回復事例が報告されています。統合失調症は、早期の発見や早期の治療が効果的です。早期の治療であればあるほど再発率が低く、適切な家族の援助や関与があるほど再発率が低いという報告もあります。一般的に、身体のケガや病気と異なり精神疾患の診断では医師によって意見が異なる場合も少なくありません。そのため、医師が診断を迷う場合には、症状をあらわす「うつ状態」という表現で診断がなされることもあります。また、たとえ統合失調症であっても症状として「うつ状態」がある場合は、「統合失調症」という精神疾患名を用いずに「うつ状態」と診断されることがあります。これは、明確な診断名を避けることで疾患者に過度な負担にならないための配慮とも考えられます。
症状
代表的な症状としては、幻覚や妄想があります。他の精神疾患にも幻覚や妄想の症状がみられますが、統合失調症の場合は特に目立った特徴があるといわれています。たとえば、自分が大切にしている考えや価値観に対して他人が悪い働きかけをするといった妄想などがその一例です。こうした疾患者本人の気持ちや考えに由来する妄想が多くみられます。また、誰かが自分を襲おうとしている「迫害妄想」や、周囲の人たちが自分を見てくるといった「注察妄想」、悪意を持った誰かが自分を尾行や監視しているという「追跡妄想」なども統合失調症の症状としてみられます。幻聴にもさまざまな症状があり、誰もいないのに声が聞こえてくるというケースや、自分を批判、批評する内容、何かを命令する内容、自身の行動を監視する内容なども聞こえることがあります。
治療法
統合失調症の治療は、主に外来か入院のいずれかで、概ね重度であれば入院、軽度であれば外来(通院)と考えられています。治療法に関しては、主に抗精神病薬などの薬物療法を中心に、精神療法やリハビリテーションが行われるのが一般的です。いずれが効果的であるかというものではなく、薬物療法をベースに、より効果を高めるために精神療法やリハビリテーションが用いられます。
統合失調症だと思ったら
統合失調症の症状のひとつである幻覚や妄想などがみられる場合は、周囲のことも考えて休職するという選択肢が望ましいといえます。特に、周囲からの言動をネガティブに受け取る傾向や幻聴が聴こえる傾向があれば、業務に支障をきたすだけでなく、社内・社外の人とのコミュニケーションも難しくなることが予想されます。こうした症状がみられる場合には、まずは医療機関を受診し、治療を最優先にすることが大切です。休職に抵抗を感じることもあるかもしれませんが、上述したように統合失調症は早期の発見と早期の治療によって再発率を下げることができる疾患です。自然に治癒・解消されることは期待できないため、まずは治療に専念することが重要です。
休職中の過ごし方
休職期間中の過ごし方は、統合失調症の回復において非常に重要です。この期間を有効に活用することで、復職への道をスムーズに進むことができます。リラックスできる環境を整え、まずは自分のペースで休息を取ることが基本です。次に、適度な運動やリハビリテーションプログラムを取り入れ、心身の健康を維持することが大切です。また、精神的なサポートを受けるために、カウンセリングやメンタルヘルス支援グループへの参加も検討しましょう。趣味や興味のある活動を通じて、日常に楽しみを見つけることも有効です。こうした活動は、復職後のストレスを軽減し、職場環境に再び適応するための大きな助けとなります。職場復帰へのリワーク施設と一口にいっても、医療機関が運営するものや障害者支援センターが運営するもの、または民間企業が運営するものなどさまざまな種類があるため、自身の特性や症状を踏まえて選ぶことが大切です。
復職への準備と心構え
統合失調症の休職期間中、復職を視野に入れる際には、心身の準備が不可欠です。まず、自分のペースで生活リズムを整えつつ、毎日のルーチンを作り出すことが大切です。例えば、決まった時間に起きる、バランスの良い食事を心がけるなど、小さなことから始めます。また、職場復帰を視野に入れるのなら、自己理解を深め、どの場面でストレスを感じやすいかを把握することで、適切な対処法を前もって準備できます。サポートが必要な際には、専門家や復職支援プログラムを活用し、心身の健康を第一に考えながら計画を進めることが重要です。このように、日常生活の中での小さな習慣の積み重ねが、復職への大きな一歩となります。
復職プログラムの活用がおススメ
復職や再就職などの社会参加を目指す場合、自立訓練(生活訓練)事業所などのリワーク施設を活用することがおすすめです。復職までの期間は症状や目標、または事業所によって多少の違いはありますが、概ね3ヶ月~6ヶ月が平均期間となっています。事業所を利用される方の中にはこの平均期間を大きく超えるケースもありますが、自立訓練(生活訓練)事業所の利用は原則として2年間(一部、例外的に3年間)であることから、自身のペースに合わせて焦らずに復職や再就職を目指すことができます。より有意義に休職期間を過ごすためには、ホームページやパンフレットなどを通じて様々な自立訓練(生活訓練)事業所の中から自身に合ったものを選ぶことが大切です。
たとえば、自立訓練(生活訓練)事業所であり、リワーク施設のひとつである「インク」では、復職プログラムのひとつとして「自己理解」プログラムを提供しています。他のプログラム内容についてはホームページをご覧ください。
インクの復職プログラム
インクの復職プログラムは、統合失調症で休職中の方が職場復帰を円滑に行えるよう、段階的に個人に合ったサポートを提供します。精神疾患を持つ方が社会復帰を目指す際には、日常生活の中で必要となるスキルを再確認し、自立した生活への自信を回復することが求められます。社会性を培う機会やコミュニケーションスキルの向上、そして自己理解を深めるためのサポートを行い、休職中の方が安心して職場復帰できるよう、実践的なサポートを提供します。視野を広げ、新たなライフスタイルを築く支援を通じて、精神疾患を持つ方々が再び社会に貢献できる環境を整えるのが私たちの役割です。